第1回 メシアシステムってなに?


「今回は【選ばれし子供-メシアシステム-】について解説していくで」

「物語を読み解く上で、最初に引っかかるポイントだな」

「うん。だからまぁ、第一回でいきなりついてこれへんかもしれん。
でも、わかりやすいように図も用意したから頑張って一緒に勉強してこ」

「さすがは学力優秀。他人にものを教えるのも得意というわけか」

「あらもー! 褒めてもなにも出ぇへんでっ」

「……なぜ彼女は笑いながら私を殴るのだろうか」


――――本題。

「Real Momentに生きる人間には、子供の頃どうしても不安定になりがちなその存在を安定させるために『あるプログラム』が組み込まれとる」

「メシアシステムのことだな」

「そう。そしてそのメシアシステムの要となるのが『ゲート因子』や。
黒板を見てみよか」





「…………ほう……」

「Real Momentで生まれる人間には、〇歳から十歳にかけて『ゲート因子』が生成されて、構成情報の中でゆっくりと育っていくんよ」

「本来は、Digital Worldに異変が起きたとき、Real Momentの人間がデバッグをするために各エリアへと跳ぶのだが、その際にジャンプするための基点となる因子だな」

「そう。だから"ゲート"因子。
でも、十歳からは構成情報の安定が進行すると同時に、ゲート因子自体の縮小が始まってまうんやわ」

「グラフで見ると、二十歳あたりで完全になくなってしまうようだが?」

「二十歳を頂点に人間の構成情報が完成されて、ゲート因子が収まる隙間が消えてしまうからやな。だから、Digital Worldの異変を止めるんは、いつだってゲート因子を内包する"選ばれし子供"だったわけや」

「だが、ユグドラシルの消滅によってそのゲート因子を悪用する私達みたいなデジタル・モンスターが現れたわけだと、そういうことか」

「ってぇ、悪人の自覚あるんかい!」

「黙秘する」

「……このアホは放っておこか」

「まぁメガシードラモンの言うとおりで、Digital Worldのデバッガーという形で"救世主"を生むはずのこのシステムが、いまではReal Momentに不利益をもたらすものへとその意味を変えてしもたんやね。
それで、皮肉ってつけられた名前が『選ばれし子供』で『メシア(救世主)システム』っちゅーわけや」

「さぁ、いまの説明で烏合の衆はついてこれたかな?」

「図がある分、本編の説明よりはイージーモードなはずやから、もし全部はわからなくても『大体こんなもん』ってのはわかってもらえたんちゃうかな」

「……ところで」

「あん? もう第一回もまとめっちゅうところで、まだなんかあるんか?」

「いや。最初に図を見たときに思ったんだが。
貴様は絵が下手だな」

「…………」

「あ、いや、うむ。グラフはとても綺麗だと思うぞ。
さすが優等生だな! ああ!」

「…………アンタ、あとでちょっとツラよこし?」

「……や、やめろ! バナナは、バナナだけは! バナナだけはやめてくれうわなにをするどこへつれていくつm(」

「――――と、いうわけで。
第一回『メシアシステムってなに?』は以上でおしまいや!
次はDigital Worldの構造について勉強していきたいとおもうんで、そこんとこよろしゅう! ほな、おおきに!」


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