第4回 各世界に流れる時間の違い


「今回は前回予告したように、各世界に流れる時間流速のお勉強だ」

「そういえば、パンドーラ・ダイアログ篇では『拓人の時間は止まったまま』とか述べられてたやん?」

「うむ、そうだな」

「でも、アヌビモンがデジヴァイス・プログラムをサルベージするのに時間が必要としていたのにも関わらず、パンドーラ・ダイアログから出た後は『拓人が死んで数分で生き返った』とかヴァルキリモンが抜かしとるしアヌビモンはサルベージ終わらしとるし、どないなっとんのや?」

「ハハハ……! 我が主がその調子ならば仕方がない、今回は私が講師を務めねばならぬようだな!」

「なんでアンタそんなに偉そうなん?」

「では、まずは図を見て頂こう」





「どうだ、一目瞭然だろう! この美しさ……まさにデ・リーパー篇で大活躍した必殺技サンダー・ジャベリン級!」

(……わかりやすすぎてムカついてきた)

「どや顔はどうでもええんやけど、なんでパンドーラ・ダイアログは点線で表現されとるんや?」

「もとより、あのデータ・ウェポンの内部には時間という概念が存在しないからな。巻き戻したり静止したり再生したり、まさに何でもありな故、時間という概念は存在するだけで矛盾を引き起こしてしまうのだ」

「ほおー……スタンドで言えば『ムーディー・ブルース』みたいなもんか」

「……なに? スタンド?」

「ところで、これ見るとDigital Worldをシュミレーターとして使うてるReal Worldはともかくとして、意外にもユグドラシルの時間の速さは全体よりも遅いんやな?」

「遅いというよりも、正確にはReal Worldと全く同じ速さで時間が流れていると言った方がいいな。Digital World全体を管理する上で、外の世界とは時間を同期させておく必要があるからな」

「ふうん……それじゃ、逆にDark Areaの時間流速とやらがやたら速いらしいけど、これはどうして?」

「それは、Digital World内部からDark Areaへと転送される情報量が膨大なことに起因している。削除されるデータを処理するためには、より圧縮された時間の中で作業するしかないからな」

「っはー、なるほどなぁー。Digital Worldの仕組みっちゅうのもよく出来てるもんやなこうして見ると」

「うむ。全てが上手く回るようにシステムを構築された『間違いの存在しないプログラム』を外側の人間達は考えに考え抜いたわけだ」

「でも、ヴァルキリモンのやろうとしている『プロジェクト・アーク』とやらはその"間違い"にはカウントされへんの?」

「……まぁ、結果としてヴァルキリモンを始めに、第二回で説明したようにDigital Worldが様々な問題を抱えているところをみると、完璧なプログラムといったものは存在しないのだろうな」

「難儀なやっちゃ……」

「そんな感じで今回のTIPSはここまでだ。奇跡の輝きを放つような美しい図のおかげで説明はほとんど不要だったように思うがいかがか!」

「やたら美しさを主張するなぁ……」

「まぁ、美しいからな。仕方がない」

「……それで、これ。黒板なのに活字がやたらキレイに入ってたりするのも気になるんやけど、アンタ一体手足がないのにどうやって図を描いたわけ?」

「…………企業秘密」

「おい!?」


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